建設時に用いられた
最先端技術
東京湾の中心部は水深が約28mあるうえ、海底面下に厚さ約30mに及ぶ軟弱な地層があります。また、東京湾地域は大正12年に関東大震災がありましたように、地震の多発地帯であり、この地域に巨大な人工島や大断面の長大なシールドトンネル、海上長大橋を建設することは、世界的に見ても新しい挑戦でした。
水面下114mまでの海底に筒状に造った壁の中を海面下70mまで掘削した「風の塔」。日本初の海上休憩施設をもつ、幅100m、長さ650mの「海ほたる」。世界最大級の直径のシールドマシンによる長距離掘進、2つのシールドマシンがお互いに高い土水圧の中でドッキングする、高い技術を駆使して作られた「海底トンネル(シールドトンネル)」。大型クレーン船を使って橋を一気に掛けた「橋梁部(アクアブリッジ)」。そして、これらの工事を施工するにあたって実施した海水を汚さないような対策、東京湾を通る船に対する安全対策、数々の未経験の巨大技術を集結して、東京湾アクアラインは完成しました。また、東京湾アクアラインは首都東京の入口に位置するため、その景観に特別の注意が注がれています。皆様に長く使って頂く社会資産として、各構造物は専門家、芸術家の協力によって景観が検討されました。「浮島換気所」「風の塔」「海ほたる」「橋梁部」について全体のバランスやそれぞれの位置、機能等を総合的に考えて景観に配慮されており、一連の大規模施設として画期的な施設となっています。
浮島換気所
浮島取付部は、シールド発進基地となる立坑及び換気塔と、シードルトンネルが海底部に達成するまでの約700mの斜路盛土部からなっています。斜路盛土部は沈下対策やシールドの安定掘進のため、盛土の下の軟弱地盤層の改良を行い、盛土両側の高い所には鋼製ジャケット、低い所には鋼管矢板等の護岸構造物を設置し、護岸構造物の間は、セメント、砂、泥岩を混合した海中でも固まる特殊な盛土を開発して施工しました。また、海底当年掘削のためのシールド発進基地となる立坑は、直下に地盤改良・基礎抗打設後、箱型の鋼殻ケーソンを設置して構築しました。
シールドトンネル
シールドトンネルは、高水圧で軟弱地盤という条件下で掘削面の安定と止水を確保するため、密閉型の泥水加圧式シールドマシンを使用しました。シールドマシンは、口径14.14mの円筒状で先端に隔壁を備えており、隔壁の前方に加圧した泥水を送り込んで海底の水圧、土圧に対抗しながら掘り進みます。先端にある回転するカッターで土を削り取り、泥水と混ぜ合わせてポンプで地上に排出しました。マシン後方では、1.5m進むごとにセグメントをリング状に組み立て、トンネル壁を構築しました。この掘削、泥水の総排泥、セグメント組み立ては、すべて自動化しました。
風の塔
風の塔の施工位置は、川崎港沖合いの海上約5kmで、水深は28m程度あり、海底面下約30mは軟弱地盤となっています。このため、サンドコンパクションパイル工法等により地盤改良を行い、その後、土留め・護岸及び足場となる鋼製ジャケットを設置しました。人工島の構築は、鋼製ジャケットの間に地中連続壁を施工し、その内側に人工島本体のコンクリート構造物を造りました。トンネル施工中はシールドマシン発進基地として、完成後は換気施設として利用しています。
海ほたるパーキングエリア
海ほたるパーキングエリアは、シールドトンネルが海底に達するまでの斜路盛土及び立坑と橋梁部まで平坦部盛土から構成されている盛土構造の人工島です。海ほたるの基礎基盤は、一部を除き軟弱地盤層の厚さが比較的薄いため、処理工法は軟弱地盤層を浚渫除去して、山砂と砕石で置換する工法を基本としました。その後、斜路及び平坦部の護岸工、盛土工の施工を行いました。また、浮島取付部と同様にシールド発進基地となった立坑は、鋼殻ケーソン工法により構築しました。
橋梁
沖合部橋梁の下部工は工場で制作した鋼製橋脚を海上で輸送し、クレーン船を使って設置しています。浅瀬部橋梁の下部工は鉄筋コンクリート製の橋脚となっています。橋梁の上部工は鋼床版箱桁形式となっており、工場で組み立てた後、「沖合部」「浅瀬部」「陸離に近い浅瀬部」の水深に応じた異なる施工方法によってそれぞれ架設しています。また、耐震性と走行性の向上を目的として、多径間連続化を図り、9~11径間という大規模な連続桁構造となっています。